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ユーザに選択の自由を提供したい!
最近どんどん知名度が上がってきているpCloudですが、皆さんもうご存知ですか?
世間ではもっぱら「買い切り版のあるクラウドストレージ」というところにばかり目が行きがちですが、pCloudというサービスのコンセプトは「ユーザに選択の自由を提供したい」というところにあるんです。
買い切りプランを備えていることも、もちろんユーザに選択の自由を提供することの一環で、同時に月額プランや年額プランも自由に選べまます。ほかにも家族プランや法人向けプランなど、選択肢が多いです。容量の拡張についても、できるだけ対応できるよう順次上限を増やしています。
そんなpCloud運営の姿勢を最も顕著に示しているのは、おそらくデータリージョンに関する部分だと思います。
pCloudは、アメリカのテキサス州ダラスと、ヨーロッパのルクセンブルクの2ヶ所にデータセンター(ファイルを保存する場所)が設置されています。ユーザは、どちらにデータを預けるか、選ぶことができるのです。
データリージョンについて
今回は、このデータリージョンについて詳しく触れてみたいと思います。
2023年の段階で、データリージョンはpCloudアカウントの開設時に選べ、変更の際は有料になっています。
気になる方は、この記事を参考にして、どちらを選ぶか考えた上でアカウントを作ると良いかも知れません。
ちなみに僕の会社は、pCloudの公式パートナー企業として活動しています。
日本のユーザさんのサポート、導入支援、広報活動などを任されています。
データリージョンはちょっと珍しい機能なので、気になるユーザさんも多いみたいです。
今までいただいたご質問内容も踏まえながら、ご紹介していこうと思います。
それでは早速いってみましょう。
データリージョンって何? pCloudに預けるデータの保管場所
データリージョンとは、pCloudサーバの設置場所のことを言います。
Dropboxにせよ、Google Driveにせよ、持っている写真や文書ファイルなどのデータをクラウドサービス側に預けるわけですが、この預ける先を選ぶことができるんです。
どこの国に預けるか。
そこにまで選択権を与えているのは、pCloudのすごいところです。
でも、なんで?
それはデータリージョン、つまりサーバ設置国には、その国の法律や考え方の影響を受けるからです。
pCloudは、アメリカ(テキサス州ダラス)とEU(ルクセンブルク)の2ヶ所にサーバを設置し、自由に選択できます。
ヨーロッパのGDPRは罰則付きの厳しい法令
ヨーロッパには、GDPRという非常に厳しいプライバシー保護規定が存在しています。勝手にお客さんのデータを扱うことを禁止したり、利用を止めたらユーザ情報を完全に削除しなければならないなど、非常に細かく厳しい規制が設けられています。しかも違反者にはかなり重い制裁が科せられるため、地球上で最も厳格なプライバシー保護規定とも言われています。
しかしGDPRは極めて厳格であり、一面安心感はありますが、他面融通の利かなさも感じます。たとえば日本にある日本企業が運営するネットサービスであっても、ヨーロッパの人が使う場合、GDPRの規制を受けるというルールがあったりします。利用者が少数ならたぶん影響は受けませんが、一定数のヨーロッパからの利用者がいる場合はGDPR対応を求められるなど、なかなか難しい面もあるということです。
アメリカの法令もかなり厳しめ
一方アメリカでも、世界のIT分野のトップを走る国家だけに、一定水準以上のプライバシー保護規定(ADPPA)が設けられています。ユーザの同意の有無にかかわらず、個人情報の収拾は必要最低限に留めおくことや、未成年に対する取り扱いに配慮すること、青少年へのターゲティング広告の扱いなどに至るまで、現在社会問題になっているような事案を具体的に制限をしっかり盛り込んでいる法律です。さらにAppleやGoogleの拠点があるカリフォルニア州がCCPAというプライバシー保護法を制定し、それが全米各州でも採択される動きがあり、このへんの先進性と動きの速さがアメリカ的な感じがします。
僕は海外の法律に詳しいわけではないので、厳密なところでの理解に誤りがあるかも知れませんが、pCloudに関して、端的には「バランスと先進性を取るならアメリカ。強力な保守を取るならルクセンブルク」という考え方で選べばいいかな、という風に考えています。
日本の法律はどうなっているか
ちなみに日本。
日本では個人情報保護法という名前で包括的に個人情報やプライバシー保護を実施しています。
ひと通りの外堀は埋めてありますが、欧米と比べると個人の価値を相当低く評価しており、たとえば営業電話を掛けてきた相手に、個人情報の削除や出典元の開示を請求しても誠意ある対応が返ってこないことに対し、実現可能な範囲で厳しい罰則はありません。日本の法律では、個人情報保護と同時に「適正かつ効果的な活用の促進」という側面もあり、根本思想的に欧米とは隔絶した位置にあるものです。
データをアメリカに預けたらセキュリティ的に危ないの?
基本的にpCloudは高セキュリティを売り物にしています。
普通に使っていて、データを預けたところがヨーロッパだから安心で、アメリカだったらヤバい、ということはありません。
まず両国とも、日本よりずっと安全にデータを守ってくれることは疑いありません。
ヨーロッパでもアメリカでも、企業や団体が個人情報を扱う上では厳しい規制がありますし、預けたデータを覗き見たり取得するような余地は与えていません。
通常のことであれば、違いを実感する機会はほぼ皆無といって良いでしょう。
ただ、アメリカは何かと陰謀論が取り沙汰されることの多い国です。
スノーデンさん(アメリカの元情報官僚でロシアに亡命して、アメリカの諜報活動について暴露した)によると、政府による超法規的な監視、スパイ的な活動が日常的にあったということなので、こういうのが好きな方……いや、気になる方は、アメリカよりヨーロッパの方が良いかも知れませんね。
データリージョンを選ぶとき、その他の要素について
これは日本固有の話なのですが、多少参考になる部分もあると思います。
日本は島国ですので、全方位を海に囲まれています。
インターネットで世界と繋がるには海底ケーブルを利用して接続されているわけですが、そのせいで、日本から海外のサーバにアクセスすると、その距離によってかなりの影響を受けます。従ってアメリカサーバの方が速度的に安定している傾向があります。EUサーバではやや遅いという話をよく聞きます。
AWSやGCPなどの世界規模のサーバは日本や近隣アジアにも拠点があったりするので影響を受けにくいですが、pCloudはセキュリティ重視でアメリカかヨーロッパにサーバを置いてあるため、ここは評価の分かれるところです。日本の法整備が一定水準以上に達して、pCloudが拠点を設置してくれると大変ありがたいですが、どうですかねぇ……
pCloudのデータリージョンはアカウント作成時に選ぼう。後で変更するには料金が必要。
pCloudのデータリージョンは、最初のアカウント作成時に選択することができます。
設定後も気が変わって、または仕事で使う中で、そういった社内セキュリティ規定が設けられた場合などは、途中からでもデータリージョンの変更が可能です。
ただし途中のデータリージョンの変更をする場合は、19.99ドルの費用が必要になります。
そこまで大きな金額ではないですが、気分で換えようとしないで慎重に選ぶことをお奨めします。
まとめ:pCloudのデータリージョンはポリシーの表現
pCloudは、データリージョンの選択肢をユーザに提供することで、pCloud自身のプライバシーに対する考え方、ポリシー(矜持)を表現したと思います。
自分のデータがどこに保存されていて、どのようなルールで守られているのか、どのようなリスクがあるのかを、ちゃんとユーザが把握してもらおうという姿勢は、pCloudの企業姿勢を反映しており、とても興味深いです。
そして有料とは言え、現状3,000円足らずの手数料で別のリージョンへの引っ越しができるのも、ずいぶん親切な話ではないかと思います。
あなたはこの記事を読んで、どちらのサーバに興味を持ちましたか?