目次
「すべてはAIのせい」は本当?そのウソ、ホントを分析してみる

2026年1月現在、PCの購入や買い替えを検討している人々の間で、
「メモリ(DRAM)とSSD(NAND)の価格が急上昇しすぎてもう買えない!ぎゃー!!」
という声が目立つようになりました。
SNSやIT系メディアでは
「全部生成AIのせいだ」
「HBM(超すごいメモリ。語彙不足。)に全部持っていかれた。ギャオオオン!」
といった風説が流布していますが、よくよく調べてみると、実際の市場はそれほど単純ではないようです。
本記事では、2026年1月時点で確認できる、公式発表・主要メディア報道・市況指標などを基に、メモリ・SSD価格高騰の「ホント」と「ウソ」を検証、整理し、私たちが直面している、輝かしい「価格上昇時代」の栄光の正体を明らかにしてみたいと思います。
ホント!AI需要が高付加価値メモリを優先させている件について

ここだけの話、AI向けGPU(NVIDIAのBlackwell世代など)には、通常のDDR5メモリではなく、DRAMチップを積層した高帯域幅メモリ(HBM)が大量に搭載されています。
HBMは、シリコン貫通電極(TSV)などの高度な工程や後工程を必要とし、同じDRAMでも一般向けのモジュールより「作る難易度」と「投資」の比重が、より大きくなります。
そのため、HBM需要が伸びる局面では、メーカーの設備投資・人員・工程最適化が、HBM側へ傾きやすいのが実情です。
この流れを象徴する事例として、OpenAIは、Samsung ElectronicsとSK hynixが先端メモリ増産を進め、目標として月間90万枚規模のDRAMウェハ投入について言及しています。
これは、先端メモリを前提とした巨大な調達・投資計画が動いていることを如実に示す数字と言えます。
ただし重要なのは、これが「一般向けDRAMが完全に作られなくなる」という意味ではない点です。
実態は、汎用DRAMの供給がゼロになるというよりも、増産の優先順位が下がり、供給元の栓が、キュキュッと締まりやすい構造が強まる――というほうが正確です。
ホント!SSDもデータセンター向けが優先されている!
NAND型フラッシュメモリ(SSDの中身)でも、データセンター向け優先の流れが強いようです。
生成AIの学習や推論では、膨大なデータを高速に読み書きするため、高耐久・大容量のエンタープライズSSDが大量に必要になります。メーカーにとっては、安価なコンシューマー向けSSDを薄利多売するよりも、高単価・高マージンのデータセンター向け製品へリソースを振り向けるほうが、より合理的なのは言うまでもありません。言い値で買ってくれそうだし(?)。
この潮目の変化を示す出来事として、半導体メーカーのMicronは2025年12月、消費者向けブランド「Crucial」事業からの撤退を発表しました。出荷は2026年2月頃まで継続し、保証やサポートは継続されますが、方向性としては、明らかに「AI・データセンター寄り」に、明確に方向転換してしまった、と言っても差し支えないでしょう。「Crucial」ブランドのSSD持っていたのに、ショックだわー。
こうした動きが増えれば増えるほど、コンシューマー向けSSDは「供給の主戦場」ではなくなり、価格は下がりにくくなるのは自明の理です。
ホント!価格上昇は「体感」だけでなく指標にも出ている!

メモリやSSDが「高い気がする」のは、気のせいではなく、価格上昇は市況指標にも表れています。
代表例として、DRAMeXchangeのスポット指標やDigiTimesでは、DDR4/DDR5の価格が大きく動いており、需給の偏りが価格に反映されているようです。
ただし、ここで注意したいのは、スポット価格は変動が激しく、契約価格や店頭実売と一致しないことがある点です。
それでも、ここまで実売価格相場が荒れる状況は、「供給が潤沢で値下げ合戦になる局面」とは真逆の市場心理を示していると言えます。
実売面でも、DIY市場ではDDR5大容量メモリが「以前より明確に高い」という悲痛な声が、怨嗟の如く市場には満ちあふれており、買い手が「価格が上がった!」と感じるのは、自然な状況になっているようです。
ウソ!価格高騰はAIだけが原因である
ただし、現在の価格上昇を「AIがすべて悪い」とする見方は、正確ではありません。
確かにAI需要は大きな要因ですが、実は、それ以前からメーカーは、戦略的な投資抑制や供給調整に慎重になっていました。
2023〜2024年のメモリ不況では、メーカー各社が大きな損失を経験しており、その時以降から、「増産して価格が崩れる」状況を強く警戒するようになっていました。
その結果、業界全体で「シェアより利益率」の色が濃くなり、供給が一気に緩んで価格が急落する展開は起きにくくなってきています。
つまり、現在の価格上昇は、
AIによる需要増加と、メーカー側の利益重視・供給慎重化が重なった結果
であり、AI単独で引き起こされた現象とは言い切れないのが実情です。何より全部AIのせいにするなんて可哀想じゃん。
メーカーが市場に影響を与えやすい構造の裏事情

ここだけの話、メモリ市場は少数の大手が強い影響力を持ちやすい分野であり、過去に価格操作が問題視された歴史もあります。
もちろん、現在の状況について「カルテルがある」と断定できる根拠があるわけではありません。
しかし、供給側が寡占に近い構造を持つ市場では、投資判断や生産配分の変化だけでも価格が大きく動きます。
消費者としては、「メーカーの意思決定が、比較的価格に直結しやすい市場」であることを前提に考えたほうが判断を誤りにくいでしょう。
日本では円安が価格上昇をさらに押し上げている
また、日本国内で体感される価格上昇が大きい理由として、為替レートの影響も無視できません。
通常、メモリやSSDの多くはドル建ての価格が基準になりやすいので、当然グローバル価格が上がる局面で円安が重なると、店頭価格の上昇は増幅されます。
実際、国内周辺機器メーカーも価格改定を発表しています。
アイ・オー・データ機器は2026年1月14日から、SSDやUSBメモリ、NASなど多数製品の価格改定を行うとしており、報道では最大54.8%の値上げも伝えられています。
これは、部材コストや物流費などの上昇を吸収しきれない状況が、国内側にも波及していることを示す事例の一つです。
ホント!一部で「サイレントなスペック抑制」が起きている

さて、PCなどの部品コストの上昇を、そのまま単純に製品価格に転嫁すれば、販売数量が落ちるリスクがあります。それはメーカーとしては、あまり宜しくない状況です。
そのため、PCやスマートフォンメーカーは、価格を抑えるためにスペック構成を慎重に調整しています。
結果として、エントリー〜ミドルクラスでは、最低限のメモリ容量のモデルを、最安値の目玉商品としてのラインナップとして残し、それ以上の、実用レベルのメモリ容量のものは、上位モデルに限定される傾向が強まっています。
SSDについても、容量そのものを削るケースは限定的ですが、付随パーツのコスト調整が増えやすい傾向にあります。
これは全面的なスペックダウンではなく、いわゆる価格帯による二極化が進んでいる状態と言えます。
ウソ!待てばすぐに安くなるという風潮
「まあ、半年も待てば在庫が余って安くなるんじゃないかい?」という期待は、少なくとも2026年初頭時点では現実的とは言い難いです。
AI向け投資が続く限り、HBMやデータセンター向け製品へ優先配分が続き、コンシューマー市場に「値下げの圧力が戻る」まで時間がかかる可能性が高いです。
実際、メディア報道でも供給逼迫や価格上昇の長期化が取り上げられています。
もちろん、AI投資が急減速すれば市況は反転し得ます。
しかし、少なくとも「待てばすぐ戻る」という楽観は危険で、2026年は「高止まり、あるいは上がりやすい年」と見ておくほうが現実的でしょう。まああくまでも予想なので、どうなるか全く分かりませんが。
じゃあ、どうすればいいの?消費者が取るべき現実的な選択について
この価格上昇局面では、「安くなるまで何も買わない」という姿勢は必ずしも最適ではありません。
- 明確に容量不足で困っている場合は、必要な分をすぐにでも確保しておく。在庫自体が無くなってしまったらどうしようもないので。
- DDR4やPCIe Gen4 SSDなどが使えるPCであれば、世代落ち製品を戦略的に活用する。
- 「AI対応」を理由に過剰なメモリ構成を選ばない。どーせGPUの方でゴリゴリ動かすものなので、PC自体のメモリ容量はそこそこあれば充分です。NPU搭載PCも高機能グラフィックボードを搭載して動かすなら、特に無理して選択しなくても、フツーのPCで充分です。
- 中古市場も視野に入れるが、保証や動作確認は慎重に。安心出来る販売店で購入しないと、入手後中古保証が切れた直後にぶっ壊れたりします。
なにより、用途を冷静に見極めることが、無駄な出費を避ける最大の防御策となます。
特に「来年になれば安くなるだろう」という期待は持ちすぎないほうが良いです。
待てるなら待つ価値はあるが、必要なら「今の価格を現実として受け入れる」判断も求められます。
ようするに、「迷ったら買え」です。アキバの神もそう仰っています。
まとめ:迷ったら買え!(←オイ)

2026年のメモリ・SSD価格上昇の主因の一つはAI需要ですが、本質的な要因は、メーカーが利益重視へと舵を切った業界構造の変化にあります。
HBMやデータセンター向けSSDへの集中は事実であり、OpenAIの「スターゲート計画」に見られるような巨大な調達・投資計画は、供給配分と価格形成に強い影響を与えています。
一般消費者向け製品が完全に犠牲になったわけではありませんが、市場が「値下げしやすい構造」から「下がりにくい構造」へ移行している以上、2026年は「安くならない」「進化が鈍る」年になりやすいでしょう。
消費者には、価格が下がるのを待つのではなく、現実を踏まえた選択眼が求められています。
いやー、今年は無駄遣い出来ませんね!!去年のうちにローカルAI用PCとRTX5080買っといて良かった!
参考文献
Wkipedia/High Bandwidth Memory
Yahoo!ニュース/シリコン飢餓とデバイスに忍び込むAIの幻影――不惑を迎えたWindowsと、AIに飲み込まれた2025年のPC業界を振り返る
EE Times Japan/2026年のHBM市況、カギを握るのは最新世代「HBM4」
OpenAI/Samsung and SK join OpenAI’s Stargate initiative to advance global AI infrastructure
WPN webProNews/AI Demand Triggers Severe RAM Shortage and Price Surges in 2026
Micron/Micron Announces Exit from Crucial Consumer Business
IDC/Global Memory Shortage Crisis: Market Analysis and the Potential Impact on the Smartphone and PC Markets in 2026
PC Watch/AI巡るメモリ争奪戦――2026年はPC、スマホに“冬”が到来
TrendForce/Rising Memory Prices Weigh on Consumer Markets; 2026 Smartphone and Notebook Outlook Revised Downward, Says TrendForce
DRAMeXchange
EMSOne/【産業動向】DRAM価格高騰、DDR5は四半期毎に30〜50%上昇続く DIGITIMESレポート
DIGITIMES
TrendForce/2026 AI Server Market Trends: Driving DRAM and NAND Flash Price Surge
EE Times Japan/LPDDRが足りない AIブームで価格高騰
TECH+/メモリの供給ひっ迫は少なくとも数年は継続 – SEMI「半導体製造装置の2025年末市場予測」を読み解く
Trendforce/Memory Price Surge to Persist in 1Q26; Smartphone and Notebook Brands Begin Raising Prices and Downgrading Specs, Says TrendForce
Wikipedia/Oligopoly
I-O DATA/商品価格改定のお知らせ
IT Media News/アイ・オー・データ、SSDやUSBメモリなど値上げ 最大54.8%増
Forbes/2026年「スマホとパソコン価格急騰」の見通し 世界的メモリ不足の影響で
livedoor News/AI需要によるチップ不足で2026年にはスマホの販売価格が6.9%上昇するとの予測
XenoSpectrum/「メモリ枯渇」により2026年のPC・スマホ価格は最大8%上昇する可能性:AI需要が招く価格高騰と市場縮小、そしてスペック停滞の真実
Invest Leaders/AI半導体・HBM需要予測|Windows10終了とAI PCの2026年特需
picico/これからのパソコン購入は「安くなるまで待つ」時代の終わり
EZ DESIGN TIPS/パソコンは今買うべき?メモリ高騰が引き起こす価格上昇の理由と、損しない買い方
JETRO/オープンAI「スターゲート」計画、世界のDRAM需給に波及



