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プロンプト設計とタグ哲学:AIとの対話による画面制御術について
「プロンプト」は魔法ではない。設計思想である。

あまたの反AIの人たちが誤解していると思いますが、「プロンプト」とは「魔法の呪文」なんかじゃありません。
たった一文を入力して、クリック一つでポチッとな!…とAIが完璧な画像を出してくれる――そんな都合のいい話はこの世に存在しません。
画像生成AIに於ける「プロンプト」とは、演出指示・構成設計・構造制御・確認工程をすべて内包した、「命令文の塊」であり、「何を描け」と命じるよりも「何を描くな」「どこを変えるな」と伝える方が大切な場合もあるくらいのヘンテコリンなシロモノです。
そもそも画像生成AIは、同じプロンプトを送っても、毎回違った画像を生成する、とても厄介な存在です。連続したキャラクターや背景、物語を描き切るコマ漫画とは真逆の性質を持っているのです。
キャラクターデザインや背景、構図などをある程度ランダムで生成してしまうのは、まあ良いとして、これと決めた設定をそれ以降、ガッチリと堅持するのって、じゃじゃ馬の乗りこなしよりもムチャクチャにタイヘンなのです。
AIは全叡智を結集して、日々、手を変え品を変え、一切指示通りに生成を行わずにプロンプトを読み飛ばす手抜きを精力的に行い、テキトーな生成でランダムな作画を行ってくれるのです。ChatGPTなんか、時々「私には画像を生成する機能はありません」とかふざけた事を言ってくる場合もあります。その時はもうAIと大喧嘩です。
毎日がAIとの知恵比べ合戦です。人間が負ける=コマ漫画作画用には使えない≒単なる、一枚絵でランダムなデザインのカワイイ女の子が、こちらを向いてニッコリ画像生成専用システムになり果ててしまうのですから始末に負えません。
そんなクソAIとのプロンプト設計において最も重要なのは、「命令構造」と「暗黙の背景知識」を明示化してコントロールすることです。
プロンプトとは、AIの想像力と暴走力を適度に亀甲縛りを行い、正しく制御するための「手枷」「足枷」「ボールギャグ」であり「方向指示板」とも言えるものなのです。
テンプレートとプロンプトスニペットについて

コマ漫画生成において、画像生成指示のプロンプトは、「プロンプトテンプレート(汎用構造)」+「プロンプトスニペット(個別指示)」という二層構造で管理すると、より整理しやすくなります。
「プロンプトスニペット」とは、よく使う指示文(プロンプト)の一部をあらかじめ切り出しておき、使い回せるようにした短い定型文のことです。
プロンプトテンプレートの例
キャラ固定・構図固定・視線方向・背景設定・照明条件などの「原則項目」など。
例:「服装・髪型・体格・背景・光源は一切変えない。感情表現は演出パートで指定。」といった指示。
プロンプトスニペットの例
そのシーン固有の演出要素・感情・動き・空間変化など。
例:「驚き→上半身を大きくのけぞらせ、口を大きく開き、手は広げる。」といった指示。
このように、プロンプトテンプレートで骨格を固定し、プロンプトスニペットでうしじまいい肉付けすることで、安定性と自由度を両立できます。
テンプレートやスニペットは、それぞれメモ帳や付箋アプリに保存しておいて、必要に応じてメッセージボックスにコピペしても良いですし、生成ルールをテキストデータにして保存しておいて、必要に応じてドラッグして「添付の内容を確認して適用して」とでも指示を出しておけば、だいたいその内容のルールをイイ感じで走らせてくれます。
ポジティブタグとネガティブタグの使い分け

AI画像生成で最も繊細な操作が求められるのが、タグ(要素)の選定です。より細かく指定することにより、より細やかな表現が可能となります。
● ポジティブタグ(出したい要素)
例:「rim light」「cinematic lighting」「soft focus」「motion blur」などを、これは「 ポジティブタグ」です、実行してください。とか言って登録してあげます。
ポジティブタグについては、演出・照明・視線誘導・描きたい空気・印象・温度感までプロンプトに含めるべきでしょう。
何を指定すれば良いのか、よく分からない時は、参考になる絵をそのままドラッグして補足説明をして送信するか、絵のイメージを文章で詳細にメッセージボックスに書き込んで、「こんな絵を作りたいんですが、この場合のポジティブタグは何ですか?」と聞けば、よほどの事がない限り、AIが教えてくれるので、その内容をあらためて「ポジティブタグとして登録します」として指示してやれば、ポジティブタグとして登録してくれます。
● ネガティブタグ(出したくない要素)
例:「extra limbs」「inconsistent clothing」「different background」など
特に漫画では、キャラ崩れ・背景ブレ・小物の変化を強く禁じる必要があります。
ネガティブタグでこれらの「状態変化禁止」を指定することで、キャラクターや背景、小物類の一貫性が劇的に向上します。
コマ漫画生成においては、勝手気ままに使えない画像を生成しまくる鬼畜な画像生成AIを、このネガティブタグを有効的に使って、如何に亀甲縛りで作り込んでいくかが重要になります。
「固定と演出」のバランス管理

画像生成AIのプロンプトに、「演出階層」と「状態管理」の概念を導入することで、より表現力が高まります。
通常モードの例
服装・髪型・光源・背景すべて固定。表情とポーズのみ変化。
強調モードの例
同一構造のまま、髪を揺らす/光芒を追加/集中線で視線誘導などの演出を解放。
このように、〇〇のルールは通常モード、□□ルールは強調モード、とあらかじめ覚え込ませておいて、必要に応じて、プロンプト内で演出の強度をコントロールするパラメータ階層を持たせることで、構図やキャラは崩さずに、情報量を増やす演出が可能になります。
プロンプトの進化の実例

当初
少女が教室で立っている。驚いた表情。
最新
#テンプレ部分
キャラクターは金髪、丸メガネ、肩までの髪型、白いブラウス、制服スカート(形・色・丈すべて固定)。構図はアイレベル、背景は教室、窓と黒板の配置は同一。光源は5500Kの自然光、右上方向から。
#スニペット部分
感情表現:驚き。眉を上げ、瞳を大きく見開き、両手を広げてのけぞる。
結果、ほぼ意図した画像に向けて、生成がヒジョーに安定し、かつ動きが伝わる画像が出力可能になります。
これこそがプロンプト設計の喜劇新思想大系です。
漫画雑誌用原稿生成にも使える!モノクロ対応プロンプト

私が現在使っている、モノクロ漫画用の核となるプロンプトの一部です。画像生成時に追記すると、結構それなりに描画してくれる筈です。
物足りない描写があれば、随時生成AIに「もうちょっと、XXを〇〇な感じにしてくれる、イイ感じのプロンプトがあれば教えてくれない?」とおねだりしてみてください。ホントにそんな聞き方でも教えてくれるのが生成AIの好いところです。
black and white manga style, japanese comic panel,
three-tone shading (pure white, screentone, black),
screen tones for shadows (including on faces),
pure white for highlights,
inked G-pen lines, hand-drawn texture feeling
black and white manga style, japanese comic panel
→ 白黒の漫画風、日本の漫画のコマ構図。
three-tone shading (pure white, screentone, black)
→ 白(真っ白)・トーン・ベタの三階調で仕上げる指定。
screen tones for shadows (including on faces)
→ 影にはスクリーントーンを使用(顔の影も含む)。
pure white for highlights
→ ハイライト部分は常に真っ白。
inked G-pen lines, hand-drawn texture feeling
→ Gペンでのペン入れ感、手描きらしい揺らぎを強調。
これだ!と思ったプロンプトは記録して再利用!

コマ漫画の画像生成において、全てのプロンプトは記録して再利用が必須です。
上手く出力できたプロンプトは常用し、上手く出力できなかったプロンプトは、ネガティブプロンプトとして随時アップデートして、必要に応じて画像生成ごとに投げかければ、徐々に生成精度がアップしていくのを実感できるのではないかと思います。
「失敗は成功の元」…。画像生成AIについては、正にこの言葉通りです。
まとめ

この章で伝えたかったこと。それは…。
プロンプトとは、演出・構造・演技・照明・空間すべてを言語で伝える技法だということです。
単なるタグの羅列ではなく、「どこをどう変えて、何を変えず、何を強調するか」をAIに明確に伝える仕組みであり、映画やドラマで言えば、「脚本家・演出家・カメラマン・美術監督」の仕事をすべて1人で行う為の、最重要の仕様書であり指示書です。
生成AIに指示書を構築する「プロンプロ作成」のノウハウは、おそらく今後どんなにAIが進化したとしても、こちらが指示したい内容を先回りして予言してくれるとか、脳波か超能力で心の中の熱いパトスをAIに伝えられるようになるまでは、当面、普遍的な手法として機能しつづけることでしょう。



