生成AIによる「ジブリ風」画像の違法性を徹底解説

高性能・高品質なPCが、一般市場に出回るようになって久しい今日この頃ですが、近頃「生成AI(Generative AI)」なるものが世間を大いに賑わしています 。
例えば、どんなに世情に疎い人であっても、「ChatGPT」なるサービス名くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
さて、最新の「ChatGPT」は、お手軽簡単に様々なイラストを生成できるようになりました。しかしそんな中、皆さんご存じの「スタジオジブリ風」の生成画像が作れてしまう!という事が、ついに世間で明らかになってしまいました。
それ以外にも、様々な漫画やアニメの「〇〇風」の画像が作れてしまうようです。元絵を用意して、それを「〇〇風」に加工することも可能です。
そこで心配になるのが、「これ、法律的に大丈夫なの?」という事です。ジブリ風のイラストを生成した瞬間に捕まってしまうなんてえのは、そりゃ絶対嫌ですよね。
そこで本記事では、生成AIによる「ジブリ風」などと言った「〇〇風画像」を生成した際の違法性について、5つの視点から詳しく解説いたします。
編集部からのお知らせ
本記事では著作権法をはじめとする関連法令について解説していますが、内容はあくまでひとつの解釈・意見であり、法的アドバイスを提供するものではありません。
当社は法律事務所ではなく、法的判断や助言を行う資格・権限はありませんので、あくまで読み物としてご理解ください。
具体的な案件や法的判断が必要な場合は、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
目次
そもそも「ジブリ風」とは何ぞな?著作権の基本を整理してみよう!

さて、最初にズバリと言ってしまうと、絵柄や作風を真似ただけの「ジブリ風」程度のAIイラストならば、著作権侵害には当たらないと考えられています(具体的なキャラクター、構図、小道具の組み合わせなどオリジナルを想起させるとアウトの可能性があり、その辺は慎重な判断が必要です:編集部注)。
ちなみに、OpenAIからは、「Addendum to GPT-4o System Card: Native image generation」という文章が提供されていますので、暇は人は自分で勝手に訳して読んでみてください(←オイ)。内容はヒジョーに難しい事が書いてあるので、今回は割愛します。
そもそも、著作権法では、以下のようなものを保護しています。
- 具体的なキャラクターのビジュアル(例:トトロ、カオナシ、湯婆婆など)
- セリフやセリフ回し
- 映画やアニメのシーン構成や構図
- 特定の背景や建物の描き方
その一方、アイデアや抽象的なスタイルそのものは保護対象外です。ここ重要です。テストに出ます。
- 例えば「ジブリっぽい」色調やライティング
- 「自然と共生する世界観」や「子ども目線のファンタジー」といった、何となくジブリっぽいテーマ
- ジブリっぽい手描き風のタッチ、背景の描写など
これは日本だけでなく国際的な原則でもあり、例えば2025年4月16日の衆議院内閣委員会では、文部科学省の中原裕彦文部科学戦略官も、「単に作風やアイデアが似ているだけなら著作権侵害には該当しない」との公式見解を示しています。
安全例:「ジブリ風の風景」「宮崎駿作品のような色彩のアニメ背景」など、キャラクターや固有名詞を含まないもの
危険な例::「トトロがバス停に立っているシーンを再現して」「千尋とハクを描いて」「千尋の親が豚になってしまった場面」など、特定作品のキャラ・場面を明確に想起させるもの
ようするに、「作風やアイデアの範囲内であれば合法だが、その生成画が、あんたどう見ても『ジブリそのもの』と確認されれば、それ違法でしょう」という考え方でいれば、ほぼ間違いないでしょう。
つまり、「なんとなくジブリっぽい雰囲気」の絵を描くこと自体は、法律上”直ちに”アウトではない」ということになります。なんかここで話が終わってしまうような気もしますが、文字数ノルマに達していないので、まだ記事は続きます。
スタジオジブリの著作権的立場について

スタジオジブリは、キャラクターや作品に対する権利を、厳格に管理していることで特に知られています。
たとえば、ジブリ作品のキャラクターや背景の一部をトレースしたり、そっくりなキャラクターを商用で利用した場合、スタジオジブリや関連企業が警告・削除申請を出すことがあります。
学校のプールの底に描いたトトロの消去要求が来たことが……まだないですね。それはディズニーのミッキーマウス事件の事でした。
いずれにせよ、ジブリ風のイメージを参考にした、あくまでも「創作」であれば、「作風の模倣」は著作権保護の対象ではないので、訴えられる可能性は低くなります。あくまでもオリキャラで勝負しませう、っちゅう事ですわな。
つまり、人間キャラで、片方の鼻の穴が描いてあるジブリ顔くらいの描写なら、大丈夫ということですね(ジブリに対する絶妙なディスり)。
生成AIによる創作物の著作権的扱いについて

AIが自動で生成した画像については、さらに複雑な法的な問題があります。
現行の日本法では、「著作物」と認められるには「人間による創作的関与」が必要であり、AIが自律的に生成しただけでは、著作権保護の対象にならないとされています。
これはアメリカでも同様で、2023年の米国著作権局の判断では、「人間が関与せずAIが生成した画像に著作権は認められない」とされています。
したがって、仮にAIが生成した「ジブリ風画像」が著作権侵害に当たるとしても、それが全部AIによる自動生成の結果である限り、生成者(人間)が法的責任を問われる可能性は、限定的とだと考えられています。可能性ゼロではないです。
以下のケースでは法的リスクが高まります。
- 明確にトトロや魔女の宅急便のキキなど、それ自身を模したキャラクターを再現した場合
- 作品タイトルやセリフ、ロゴなどをAI画像に含めた場合
- 商用利用目的で、大量に「ジブリそっくり」なAI画像を販売した場合
このようなケースでは、著作権や商標権・不正競争防止法に抵触する可能性があるので要注意です。
日本国内における「パロディ」「二次創作」の扱いについて

日本では、悠久の時の流れの中、はるか古来より、非営利・同人目的のエッチな二次創作が広く黙認されてきた、美しい伝統・文化があります。エッチじゃない二次創作も若干あります。
コミックマーケットやPixivなどで公開されている「○○風イラスト」やパロディ作品は、著作権者によって暗黙の了解で許容されているケースが多いようです。もしくは知らされていない、知ろうとしない、知ってて諦めているケースなどがあります。
しかし、「黙認」状態である事は、あくまで法的保護が担保されている訳ではありません。たとえ非営利でも、著作権者が「これは違法コピーだ」と判断した場合には、ただちに削除要請や法的措置が取られる可能性は否定できないのです。だから二次創作同人誌って、結構キワキワな存在な訳で、よくあんなに大規模に大々的にやってんなーと、産まれてこの方、二次創作漫画を一度も描いたことのない筆者が感想を言ってみました。ま、単に同人仲間が居なかっただけですが。
話は戻りますが、スタジオジブリはこの点でも、極めて慎重な姿勢をとることが知られています。
特に作品やキャラクターが直接的に描かれている場合は、如何に「ファンアート」であっても公開停止を求められる可能性がある事は、念頭に入れておく必要があります。
「AIジブリ風」画像の今後とユーザーのリスク管理

AIでジブリ風画像を作成すること自体は、必ずしも違法とは限らないことは、これまでご説明してまいりました。
以下のような点に注意しながら活用することが望ましいでしょう。
- とにかく、特定キャラクターやシーンを模倣しない
- 作品名・ロゴなどを画像内に含めない(結構な確率でコンテンツポリシー違反にされます)
- 商用利用を控える、もしくは十分な調査を行い、あらかじめ許諾を得る
- 出所を明記する(例:「AI生成によるファンアート」などを明記する)
また、AIサービス提供側も、「著作権リスクの高いキーワード(例:トトロ、カオナシなど)」をフィルタリングするケースが増えているようです。
これは、ユーザー保護の観点でも妥当な措置と言えるでしょう。一例を挙げれば、肌色要素が強くなるような生成指示を出しても、今は結構な確率でAIに拒否られます。それがしたかったのに!!制限の緩い生成AIが欲しい!
結論:ジブリ風=即違法ではないが、模倣の度合いがカギ

結論として、生成AIで「ジブリ風画像」を作成すること自体は、現行の日本法や国際的な著作権ルールにおいて、違法とは限らないのが現状です。
ただし、「ジブリ作品に似すぎている」と判断される場合、著作権侵害や不正競争などのリスクが生じる可能性があります。利用者としては、「どこからどこまでが危険ラインか」という線引きを、丁寧に行うことが求められます。
特に商用利用を考えている場合は、あかじめ弁護士に確認して法的アドバイスを得るなど、慎重な判断が求められることでしょう。
おまけ

最後にマル秘テクニックを少々。
沢山ジブリ風AIイラストを作成していると、ある時、突然、「コンテンツエラー」となって、一切ジブリ風のイラストを作画できなくなってしまう場合があります。困った!
でも大丈夫、そんなときはプロンプトに「スタジオポノック風に描いて」とお願いすれば、あら不思議!
ジブリ風イラストと「そっくりな絵」を生成してくれます。これは便利ですね!(爆)
すごいぜスタジオポノック!!

参考文献
OpenAI/Addendum to GPT-4o System Card: Native image generation
AI総合研究所/【AIでジブリ風画像】ChatGPTで無料の画像生成のやり方と著作権を紹介
関真也法律事務所/人工知能(AI)が生成した作品は著作権で保護されるか?米国で判決(Thaler事件)
文化庁/著作物 – 第2条(定義)
FEDERAL REGISTER/Copyright Registration Guidance: Works Containing Material Generated by Artificial Intelligence