万年筆:スーベレーン M405 黒 森山モデル
2010年02月07日 | カテゴリー こだわりの逸品

Pelikan Souverän M405 Schwarz (Federbreite:M)
森山モデルの圧倒的な書き心地を前に、一時的にPC対面時間が減少するという奇跡(!)まで引き起こしたスーベレーン M800 緑縞ですが、3Bならではの弱点がありました。
実は、文字が太すぎるのです。
日記帳や業務メモ帳はB罫のノートです。ここに3Bの太字を書いていくのは大変な困難です。文字が滲むので、あとで読み返すとよく分からない字まで……
アイデアノートは無地であったり、罫線があっても気にしないで書いているので良いですが、日記や業務ノートはなかなかそう言うわけにはいきません。
せっかくだから、できるだけ長く愛すべき万年筆に触っていたい……
贅沢というか、もはや他人にはどうでも良さそうな話について大いに悩んでいると、
「そういう用途なら、むしろM400くらいがお奨めですよ」
と森山氏がアドバイスして下さった。

大きさ比較。M800の方が一回り大きい。実際に手にすると随分違うように思うのは、やはり重量感の違いだと思う。
早速実物を触らせてもらったが、その絶妙なコンパクトさにグッときます。
長さは、いわゆる一般的なボールペンとほぼ同じくらい。普及品のボールペンと比べると軸そのものは太い(2倍くらいあるかな)ですが、持った感じ太いなぁ、という印象はありません。意外と手にしっくり来る感じがあります。このM400というモデルは女性にも人気の種類らしく、確かに僕の妻も「見た感じより持ちにくくはない」と言っています。
M800とは比べものにならないほどの軽さにも驚き。
M800では、ペン先が紙面から浮かない程度の絶妙な重量感が特長で、文字を書いている間、不思議なくらいの安定感があります。人間が文字を書く時、気づかないながらにペンを支えるためにわずかな力をペンに対してずっと入れ続けているのですが、このM800はペン自体の重量のために余分な力を加える必要性がなく、それがひいては長時間の筆記でも疲れを感じない秘密となっています。
ところが、このM400は軽い。驚くほどに軽い。値段が値段だけに勇気は要りますが、指先でクルクル回しちゃいたいくらい軽いのです。
この軽さに不安を感じている様子を見てとったのか、「業務メモなら、長時間の筆記というわけではないと思いますから、この軽さでも特に疲れるということはないと思います」と森山氏。なるほど、確かに業務メモ帳の筆記時間はせいぜい15分程度。日記だってそんなに時間をかけて書かない。延々と書いているのはむしろM800を使う時ですから、この心配は無用かも知れません。
「ペン先も硬くて、どちらかというと筆圧の強い人向けです。でも、業務メモって意外と速記気味になるでしょう? そうなると幾分筆圧が強くなるから、M400の方がピンとくると思います」
そこまで読んで薦めてくるとは、さすが森山氏だと改めて感動。
初心者の人は万年筆を先の方で持ちたがり、玄人になればなるほどペン尻に近い部分を持つように変わってきます。ペンを持つ時に余分な力が入っていると先端の方を持つ方がバランスが良く、余分な力が抜けると万年筆自体の重さで筆記する方が楽になるので後ろの方を持つようになるのです。このM400はキャップを外した状態ならコンパクトに取り回して使えるし、キャップを後ろに付ければペンの後ろを持った筆記にも耐えられるようになります。その自由度の高さもこのペンの魅力のひとつだと思います。
「か、可愛い……」
でしょう、と言わんばかりに森山氏がニヤリとされる。これはもう、買わないわけにはいかない。
早速ペン先BのものをM字に研ぎ出してもらうことに。
「ところでシルバー、どうですか?」
森山氏の薦めているのは400のシルバートリム405シリーズのこと。
400シリーズはキャップの天冠部やクリップなどの装飾が金メッキ加工されています。これが405になるとロジウム加工となって銀仕上げ(シルバートリム)となっています。
M800は金だったので、今度は銀もどうですか、ということ。もちろんその提案に乗らせていただきました。
今度は縞なしのブラック。シンプルさをコンセプトにまとめ上げたかったのです。青縞と銀か、黒と銀かで迷ったのですが……
「インクは……何かお奨めのものは?」
「ターコイズとの対比なら、ブラウンはキレイですよ」
試してみると意外と良い感じの色合いです。黒のボディとの調和も取れています。即決、このペンはブラウンとなりました。
10日後、仕上がったM405を受け取りに再訪。
「M800のようなヌラヌラはないですよ」
と先に断られていましたが、やっぱり職人芸です。素晴らしいインクの出具合に感激しました。M字なので決して出過ぎて文字が潰れるほどではなく、それでいて擦れるようなケチな出方でもない。絶妙なインクの流出具合です。使い込んでみて思うのは、常におろしたてのようなインクの出方をしてくれ、切れることのない泉が組み込まれているんじゃないか、と錯覚しそうなほどにヌラヌラな書き心地がずっと維持されています。
確かにM800と比べるとペン先は硬い印象があります。しかし、用途が用途だけに、ガーーッと書いていってキュッと小ぎれいに止まってくれるイメージのペン先にまた惚れ込んでしまいます。M800は急には止まれないイメージで、徐々に息を吐くように止まるような感じがあります。やっぱり歴然とした使い分けがそこにはあるのです。
持った感じとしても、M800のような余りに太いボディより、このくらいの方が普段使いには魅力的です。気軽に持ち出してキュッキュッと書き込み、サッとペン入れに仕舞う。そこに躊躇もなければ、もったいぶった儀式もなく、ただ気持ちが向いた時に使えるという森山モデルが僕の手元に。これは随分素晴らしいことのように感じます。
M800は僕にとって「頼るべきもの」で、M405は「飼っているペット」のような存在、と言えばかなり精度の高い表現だと思います。
可愛いやつ、僕の手元でいつも元気にコロコロしているM405は、これもまたこだわりの逸品であると僕は大変満足しています。
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